【HEROES HISTORY#196】芥川龍之介

芥川龍之介、本名澄太郎、は1892年3月1日に東京市下谷区に生まれました。昭和3年（1927年）7月24日、自ら命を絶つことでその生涯を閉じました。彼の才能が開花した期間は短く、それでもその深遠な洞察力と独特な文体で文学界に深い足跡を残しました。

芥川龍之介の生涯

彼の生涯は一冊の小説そのものでした。明治20年（1887年）3月1日、東京に生まれた芥川龍之介は、早くに母を亡くし、叔母に育てられました。少年の頃から文学に熱心で、言葉遊びを好んだという逸話が伝えられています。

彼は東京帝国大学（現・東京大学）文学部英文科に進学。大学在籍中には文学研究会を結成、後に「我等の探求する芸術の新しき生命」を掲げ、大正デモクラシーの時代に一石を投じることになります。

大学卒業後の1914年には、「羅生門」を発表、太宰治や三島由紀夫ら後世の文学者に多大な影響を与える存在となりました。1921年には、「地獄変」で芸術院賞を受賞。日本文学界を代表する作家としてその名を轟かせました。

芥川龍之介の最期

しかし、その成功は龍之介の精神を蝕んでいきました。彼は次第に病気を患い、それが文学作品に暗い影を落とすようになります。後期の作品は彼の内面を鋭く描き出し、読者に強烈な印象を残しました。

最後の一年は創作活動を続けながらも、彼は「人間失格」に陥り、次第に絶望感に苛まれていきました。昭和3年（1927年）7月24日、彼は自ら命を絶ちました。享年40歳でした。彼の遺書には、「生れてから今日まで、私の病状を正直に述べてみれば、私は人間ではないから死ぬのだ」と綴られていました。

彼の死は文学界に大きな衝撃を与え、日本の文学史に深い爪痕を残しました。遺された彼の作品は、その心の闘いと高い芸術性を伝える重要な資料となっています。彼が遺した言葉は、今もなお多くの人々に勇気と慰めを与えています。

芥川龍之介の死後、文壇から彼の名を忘れることはなく、彼の影響は後世の作家たちに深く残りました。芥川の創作の奥深さと、そこから滲み出る人間の苦悩は、それぞれの時代を生きる読者たちに共感を呼び、彼の作品は永遠の命を得ました。

芥川の作品群は彼の心情の反映であり、その作品の中で読者は芥川自身を見つけることができます。そこには彼の人生、彼の悲哀、彼の喜びがあり、それはまるで彼自身が言葉で描いた自画像のようです。

その文学的才能と深遠な思索が結実した作品群は、彼の死後も多くの読者を惹きつけ続けています。芥川龍之介の遺した作品群は、繊細でありながら力強く、常に新たな発見を読者に与え、文学の価値を再確認させます。

生涯を通して揺るぎない文学への姿勢を持ち続け、その深い内省と才能により多くの優れた作品を生み出した芥川龍之介。彼の死は彼の人生の一部であり、それ自体が彼の作品の一つであったかのようです。しかし、その死は彼の作品が未来永劫に渡って生き続けることを意味するものでもありました。

芥川龍之介の格言

どうせ生きているからには、苦しいのはあたり前だと思え

“どうせ生きているからには、苦しいのはあたり前だと思え”という芥川龍之介の格言は、彼の人生観を端的に表しています。生きることそのものが苦しみであるというこの言葉は、彼の作品群にも共通する深い洞察と自己認識を表しています。

この格言は彼が絶えず直面した人生の苦難を受け入れる姿勢を示しています。生きるとは絶えず困難と闘うことであり、それがあたり前のことと受け入れることで、人は前に進む力を得るのです。

芥川の格言は、彼自身の生き方の表現でもあります。苦しみを避けず、向き合うことで自己を成熟させ、より深い理解へと導く道筋を見つけ出しました。この格言は、生きるとは困難を乗り越え、成長することだと教えてくれます。

芥川龍之介は、その短い人生で多くの苦悩を経験し、その中から真実を見つけ出しました。その真実は、生きることの困難さと、それを受け入れ、乗り越えることの大切さを説くものでした。彼のこの言葉は、生きるという経験そのものから学んだ教訓の表現であり、芥川龍之介の遺した言葉の中でも特に重要な一つと言えるでしょう。